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2006年 08月 04日
危険学のすすめ
ISBN4-06-213529-9
副題は「ドアプロジェクトに学ぶ」。
ライフログに載せました。
学校関係者は必読です(理由は途中に書いてます)。

 「失敗学」で有名な畑村洋太郎教授が昨年精力的に取り組まれ,NHKでも2回放映され,雑誌の記事として広報されてきた「ドアプロジェクト」の成果報告書です。

 キーワードは
  ・自律分散型プロジェクト
  ・本質安全 vs 制御安全
  ・「原因究明」と「責任追及」
  ・危機回避能力の「教育」
です。

 子どもの誘拐,いまは流水プールでの事故,この本の冒頭にあるエレベータの事故。世の中には危険が潜んでいるわけですが,いったん死亡事故が起こると,その原因を掘り下げて,「再発しないように」という根本対策ではなくスケープゴートを見つけて「誰かを処分する」ことで対処した体裁を取り繕うことしか行われていないのが現実です(しかし,それが警察関係者だと起訴すらされないことがあること「歩道橋事件」で国民は知ってしまいましたが)。

 さて,重大事故が発生すると「事故調査委員会」が組織され,報告書が作成され事故防止に役立てようとするのですが,いかに原因を究明しようとしても,その報告が刑事訴追の資料とされる法制度の仕組みである以上それがある程度「あいまいな」報告書に仕上がる「はがゆさ」が,「ドアプロジェクト」をはじめるきっかけになったと7章で説明されています

 この「勝手連事故調」である「ドアプロジェクト」の成果と,「自律分散型」プロジェクト運営方法であるがゆえにできた成果の生かされ方に非常に感銘をうけます。
 「チーム学習」「自律学習」をうちのボスは自分の授業で実践し,研究報告を発信し続けていますが,それと同じメカニズムで短期間にすごい成果をあげることができたとただただ驚嘆するばかりです。

 「自動回転ドア」での死亡事故をきっかけに調査対象を「ドア」という視点に広げた点など,プロジェクトに参加しやすく,また成果を広く社会に還元しやすいようにというプロジェクト結成方法そのものにも呼びかけ人である畑村先生の「あー,一緒に仕事したい」と思わせる卓越したリーダーシップにも注目すべきだと思います。

 この「危険学のすすめ」は,機械設計の安全という範疇にとどまらず,コンピュータシステムや,通信や,会社の事務処理手続きなど「ミス」が発生する原因調査全般の分析方法にも応用できる教科書です。

 さて,「学校関係者必読」というのは,学校には「防火シャッター」「防火扉」があるからです。あれ,非常に危険です。NHKで放映されたときにも,防火シャッターに挟まれたときの危険性が映像で示されていました。
 しかし放映されていませんでしたが,この本では「防火シャッターの取り付け工事に手抜」があることを偶然見つけたことが書かれています。これ,怖いですよ。火災でもないのに防火訓練を重ねたり,休日に防火シャッターを閉めて侵入対策しているとワイヤーがすり切れて,ある日突然「子どもがはさまれた」という事故が発生する可能性があるのです。
 こんなの,シャッターの中を見たことが無いヒトにはわからないです。点検は「きちんと閉まる」程度でしょうから。

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 このほか,なんで「コンピュータシステムや,通信や」と書いたのかというと,つい先週,なんでこんなトラブルが発生するのか説明をうけて,設計(アルゴリズム)そのものが間違っていると思わず指摘したことがあるからです。設計者はシステムのタイマーをきちんと同期させておけば複数のコンピュータでの処理がきちんとできるという思い込みで処理アルゴリズムを作っていました。しかし,ネットワークや通信システムを作ったことがあるヒトならわかりますが,タイマー処理は「トラブル発生時に処理が永続しないようにするために使用する」程度のもので,複数のコンピュータ間の通信にはハンドシェイク処理は必須です。データを送ったなら,正常に届いたかどうかのフラグくらいは最低限すべきでしょう。フラグを作るのが面倒なら,届くべきファイル名とそのファイルサイズをチェックするくらいはしないと。でもそのシステムは「絶対に届くはずだから」「何秒で届いているはずだから」ということで,一定時間ごとに処理をする設計でした。
 で,対策は「時計を合わせる(NTPをきちんと動くようにする)」「処理する時間間隔を伸ばした」を続けていただけだったのです。で,NTPの設定がきちんとできていなかったから稼動して半年もすると誤差が大きくなって…が繰り返されていたわけです。

 キーワードに「本質安全 vs 制御安全」といれたのは,こういう話もあったということです。

 なお,「危機回避能力の「教育」」に関しては,バイクの「4ない運動」とか,「携帯電話を子どもに持たせない生活指導」とか「ナイフで鉛筆を削らせない」とかいう「安全生活指導」がその場限りのものに過ぎないか,ということを私は言いたいです。
 あっと,それらの運動そのものには反対しません。成果はあるわけですから。でもバイク事故があったとき「なんで学校がもっと指導してくれなかったのか」という本末転倒の非難が学校に行くのはおかしいわけです。
 実際に「うちの子どもが自動2輪免許をとって,友人からバイクを買って乗っているので,学校で乗らないように指導してください」と連絡してくる保護者がいる,と嘆いている校長先生がおられました。だれが免許を取らせて,バイクを購入したんだ,といいたいのをぐっとこらえなければならない先生の姿を想像すると,「そら自殺する先生が増えるはず」と思いました。

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 すべての事故で必要なのは「原因究明」による「再発防止対策」で,そこに不作為があった場合には「責任追及」がありうるはずだという社会認識の変化が必要だとあらためて認識しました。

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by ji3faf | 2006-08-04 09:00 | その他


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