2006年 08月 18日
「危険学のすすめ」よりも先に読んでいました。 ISBN4-09-387631-2 この本は,著者の連載記事に加筆修正を加えて,大幅に構成をしなおして単行本にしたものだそうです。 1.同じ脱線事故はであっても,福知山線の事故は「失敗(特に後続列車の事故防止措置は通りかかった主婦の機転であり,JR西の事故防止システムによるものではなかった点)」だけど,「中越地震での新幹線事故」は「成功」といえる 2.みずほグループのシステムトラブルを回避できない経営陣の浅はかさ(これは日経コンピュータ編 「システム障害はなぜ起きたか」ISBN4-8222-0783-8で分析されている) など,「失敗」を授業料と考えないで「責任逃れ」していると手痛いしっぺ返しを必ず食らう,「因果応報」というか,先人の「失敗の」知恵を引き継ぐシステムとしての「動態保存」の提言とか,失敗学の教祖としての本文が書き込まれています。 私の親父も板金職人だったんで,宮大工の大棟梁である間宮熊男さんのエピソードなんか「わかるなぁ」という感じ。 失敗は責任追及だけでなく,同じような惨事を防止するためにはどうするのか,という視点での分析がなければ,かならず再発するということがよく分かります。 第5章の地震のはなし。141ページに津波の石碑写真が掲載されていますが,そういう先人の知恵が無視されるのは本当に怖い。あんなところに家を建てるなんて,というのはたんなる言い伝えだけではないわけです。地盤の弱さなんて,地震が起きないとわかんないし。東北新幹線の橋げた破損や,富士通半導体工場のガス漏れ防止なんか,やるべきことをきちんとすることで災害が防止できたわけです。姉歯さんの構造設計偽造は,もっと弾劾されるべきでしょう。地震がおきて人命が失われたなら,殺人罪として起訴すべきものだとおもったりします。 職人は,守るものと,崩すものを「経験とカン」で見分けるようですが,愚直なまでの「守るものは守る」ことを科学が証明できないからといって無視するのは,「傲慢さ」なのでしょうね。 重大インシデントが起こってからでは遅いですが,起こってしまったらその原因を徹底的に分析するという「職人技」がこれからの日本の産業を支える技術だと私は思います。 情報産業も同じです。
by ji3faf
| 2006-08-18 00:11
| システム管理
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