2005年 10月 16日
「e-Japan実現型教育情報化推進事業」のテキストは…
深ーい知り合いが、某県で上記の研修講師をしたんだけど、テキストは使わなかったと聞きました。
 で、調べてみると業務委託先である社団法人 日本教育工学振興会から、すでにPDFファイルとして公開されていました。
 ■学校が自ら校内LANの整備・運営を行えるように研修を実施!
のページの下のほうにある、
 校内ネットワーク活用ガイドブック2005
です。ちなみに、このファイルは、ダウンロードしないとFirefoxやIEでは読めないです。

 たしかに苦労してお書きになった先生方には悪いですが、ネットデイ活動をそれなりにやってきたものにとって、また、ネットワークの管理をしているものにとって、はっきりいってよい資料ではないです。

 逆に言うと、これらの「揚げ足」をふまえて第2版を作っていただけたら、使える資料になると思うわけです。

というわけで、目だった点を列挙します。

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■「播磨地区のネットデイ」=「日本型ネットデイ」と呼ぶの?(20ページ)
 たしかに播磨地区のネットデイ活動はすばらしいものです。この活動のすばらしさに異論はありません。しかし、それを「日本型」と呼ぶのには反対します。なぜなら、
 「ネットデイは地域の縁日」
と言い切っているからです。縁日というお祭りをすることがネットデイではないと私は考えています。すくなくとも、私がかかわってきたネットデイ活動はお祭りではありません。ですから、播磨地区のネットデイの方式を「日本型ネットデイ」と呼ぶのには強い違和感を持っていることを表明しておきます。

■保護者の役割と使命はこうなの?(21ページ)
・「校内LAN整備は行政の仕事」という考えを捨て、自発的に協働の輪の中に加わる。

とありますが、これには、昔の文部省がネットデイ活動を勧めていた文書に「ボランティアの有効活用」と書かれていたものがあったことを連想してしまいます。
 憲法26条の2「…義務教育は、これを無償とする。」はどこいったんだ、といっておきます。

 「校内LANの整備は、学校校舎の整備ですから行政の仕事です。ですが、現状を鑑みて」というならわかります。税収が落ち込み、予算の縮小が余儀なくされている現在、自分の子どもが置かれている環境整備を行政に任せていたら、いつまでたっても整備されないから、保護者が立ち上がる、というならわかります。いままでのネットデイはそういう趣がありました。行政に任せられなかったからです。
 行政が実施すると、必ず「地元企業優先」「入札による低価格化はあっても技術審査や検収作業はされない」ということがあるからです。
 わたしが加わったネットデイで、業者が実施したLAN工事の欠陥を発見したことが少なからずあります。メーリングリストの相談で、LANの機器の故障だと思いこんでおられたことが、実はケーブルの成端工事ミスだったこともあります。
 ネットワークケーブルの配線工事は、電力線や電話線の配線とおなじと思っている業者もいままでは多かったのです。ケーブルを引っ張る強さや、曲げの半径、成端方法でネットワークの性能が違います。「FlukeによるNext値を測定し、10dB以上であること」とかいうキーワードを工事仕様書にいれるだけで、ネットワークの工事ができる業者かどうかは判断できます。
 家電量販店で販売されている導通だけをしらべる「ネットワークテスタ」を使って、「テストは正常でした」では全く意味がありません。

 あ、播磨のネットデイ活動はこの測定をきちんとしていますから、下手な業者よりはるかにまともなケーブル配線をしていると思います。上の批判は、工事内容のことではなく、あくまでも「ネットデイ活動」=「お祭り」=「日本型」という定義に対してのことだということを繰り返し主張しておきます。

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つぎに技術的な話。
 どうも特定企業の技術用語を使っていたり、unixの用語とまざっていたり、いったい何年前の
技術的トラブルをベースに解説しているの、というところがあります。
 つまり、「第2章 校内ネットワークの仕様」と「第3章 校内ネットワークの運用・管理」は合っていないのです。

第2章では光ファイバーの配線や、無線LANも含まれている現在の技術ベースの話が主体となっているのにもかかわらず、第3章のなかの「ネットワークの障害管理」ではもう廃れてしまっている10Base2/5のやダムハブでのトラブルをベースに書かれているのです。

個別に見てみましょう

■RAIDだとバックアップは不要?(63ページ)
 RAIDというのは、HDDの故障が発生しても、サービスを止めずに運用し続けることが可能な技術です。決してバックアップを不要にする技術ではありません。
 これを間違えてセールスする人が多いのは事実ですが、絶対に間違えないでください。
①複数のハードディスクへの同時記録(RAID*2)  多忙な学校現場では、担当者がハードディスクのバックアップ作業を定期的に手作業で行うことは難しい。そこで、児童生徒がデータを保存する際、常に複数のハードディスクに記録が行われる方式のものが望ましい。
*2 RAID…複数のハードディスクを並列に接続し、一括制御する技術・規格。アクセスの高速化、信頼性の向上、データの復元などの効果がある。Redundant Array of Inexpensive(Independent)Disks

と書いてあったら、バックアップしなくても運用できるシステムだと勘違いするでしょう。事実は違います。RAIDの場合、性能を発揮するためにHDDの性能を揃えることが必要です。そのためできるだけ同じロットのHDDを使います。すると、トラブルが発生すると、同じロットですからすぐに復旧しておかないと別のHDDもすぐに故障します。ところが運用できるがためにHDDの故障に気づかず、複数のHDDが故障してどうしようもなくなった、ということが発生します。この場合、RAIDはバックアップの代わりだと信じているがため、復旧用データがないという最悪の事態もあります。
 なお、RAIDがバックアップの代わりにならないことを証明するのは簡単です。バックアップを定期的に行っておれば、古いデータが残ります。しかし、RAIDの場合、うっかりとファイルを削除したり、上書きしたりすると、それは正常操作ですからもとのデータは失われます。バックアップだと、古いデータが別の媒体にあるはずですから、それを取り出せば復旧できます。
 この違いをお分かりいただけたでしょうか。

■メーカの用語(68ページ、96ページ)
 「ダイナミックENAT」と特に断っていますが、メーカによって『NAT』自体がその機能までを含んでいたり、『IPマスカレード』『eNAT』『NATe』『アドバンストNAT』『エンハンスドNAT』とばらばらです。
 「マルチプルVLAN」も、特定企業のスイッチングハブの「特徴」です。非常に便利なのでお勧めですが、一般的なものではないことに注意しておいてください。
 そうでないと「入札仕様書」にこれらの言葉を「一般用語」だと思って書いてしまうと、メーカ指定したことになってしまうわけです。

■パーミッション(76ページ)
 「パーミッション」というのはunixの用語です。Windowsでは「セキュリティのアクセス許可」です。NTFSフォーマットされたドライブ(パーティション)だと、フォルダのプロパティに「セキュリティ」タブが表示されますが、その「アクセス許可」のことです。
 unixのアクセス権限(パーミッション)の設定概念とWindowsのアクセス設定の概念は設計思想は似ているようで違いますから、その違いをしっかり把握していないとハマります。

■サブネットマスク(88ページ)
 255.255.255.0のような書き方でWindowsの設定をしますが、ネットワークの設計ではサブネットマスクはビット数を書きます。CIDRという技術のためです。
 たとえば、
   ネットワークアドレス 192.168.1.0
   サブネットマスク   255.255.255.0
の場合は、サブネットマスクが24ビットなので「192.168.1.0/24」です。
 このビット数によるサブネット化というのが重要です。これは、つぎのIPアドレス体系に関係します。

■IPアドレス体系について(90ページ)
 このページには間違いがあります
機器が253台以下であれば192.168.0.1から192.168.1.254を使い

これは、「192.168.0.1から192.168.0.254を使い」です。
 また、ここでは
慣例的には、コンピュータやネットワーク機器でIPアドレスを割り振る必要がある機器が253台以下であれば

とありますが、これもうそです。「同じサブネットワークに属するべき機器が」という条件がつきます。
 普通は1つのサブネットワークに254台以上接続させることはありません。「ブロードキャスト」というデータパケットが増えるため、ネットワーク性能を落とすからです。
 パソコンが何千台、何万台あるような大学でも1つのパソコン教室には200台ほどまでにして、ネットワークを分割し、ルータでルーティングすることでブロードキャストパケットを減らします。254台以上あるから、という理由だけで「172.16.0.1」のような元クラスBのアドレスを使いません。 上で説明したサブネットマスクを上手に使ってサブネットを25ビットに増やしたり、逆に23ビットに減らしたりしてルーティング情報を集約するなどしています。
 元クラスCの「192.168.0.0~192.168.254.0」のプライベートアドレスだって、そういう使い方ができるのです。
 この説明は間違っています。

■nslookup(117ページ)
「トラブル切り分けツール」として、Windowsでは「nslookup」がありますが、それに相当するunixのコマンドは「dig」です。「nslookup」もまだ使えますが、もう数年前から推奨されていません。

■トラブルの原因(119ページ~121ページ)
 119ページには「レピータ・ハブのクロック精度不良」「伝送路のインピーダンス不良」「トランシーバのSQEスイッチ設定誤り」とかありますし、120ページには「終端抵抗のゆるみ」とありますが、時代遅れの技術の話です。これらはすべて10Base2/5の時代の話で、第2章で説明されているスイッチングハブや無線LANではお目にかかりません。
 そもそも「SQEスイッチ」なんてしっている先生がおられたら、そのかたはもうネットワークを10年以上使っているベテランです。
 それよりも、現在は

 ・RJ45の成端工事ミスによるスプリットペアやNEXT値が低いためのノイズによるトラブル
 ・ケーブルを踏み潰したり、曲げ半径を守らなかったり、設置工事時にケーブルを規格以上の力で引っ張ったことによってケーブルの「縒り」がほどけてノイズを拾う
 ・ネットワークケーブルを電力線と近接して平行に配線したためノイズを拾う。たとえばフロア間の配線や床下配線のときに、既設の電力線にネットワークケーブルを縛り付けているなどです。ちなみにカテゴリー5(100BaseTXで使用)の規格ですら電力線とは5cm以上離すことになっています。

などのほうが多いです。
 あ、そうそう、スイッチングハブも「1ポートだけ使えなくなる」という故障もあります。この場合、リンクランプは正常に点灯する場合すらあります。
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by ji3faf | 2005-10-16 06:40 | 情報教育


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